米国のQR2終了のタイミングを探る

世界経済を左右するテーマ、QE2、ソブリンリスク、インフレ問題、そして民主化ドミノ。世界経済が直面する問題を総点検。資源高騰も悩みの種に。問われる各国のかじ取り。

米国の利上げ開始は雇用、住宅の回復力次第

GDP(国内総生産)の規模で世界全体の3割を占め、断トツの規模の米国経済。その景気にこのところ減速感が強まっている。

 

金融市場のイメージ

 

今年1〜3月期の実質GDP成長率は前期比年率1.8%へ低下。4月分の指標では、失業率が前月比0.1回上昇の9.0%と高止まりが続き、鉱工業生産は横ばい。ISMの製造業、非製造業景況指数は、ともに2ヵ月連続の下落となった。住宅着工件数は同い11%減の年率52万戸と極端な低迷が続き、住宅価格は二番底の様相。ニユーヨークダウも5月に入り反落基調にある。

 

こうしたデータを受け市場内では、米国連邦準備制度理事会(FRB)が昨年2010年11月から実施している6000億ドルの国債追加購入(量的緩和第2弾=QE2)を予定どおり6月末に終了しても、金融引き締めに転換する時期は一段と先延ばしになるとの観測か強まっている。

 

政策金利であるFF金利の先物市場(シカゴ商品取引所に上場)を見ると、FF金利が現状の0〜0.25%から0.5%へ上昇するのは「来年8月」と見込まれる。3月末には「来年3月」との観測だったので、ここ2ヵ月で利上げ予想時期が5ヵ月も後にズレた格好になる。雇用最大化と物価安定という、法律上の「デュアルマンデート(二つの使命)」を重視するFRBにとって、看過できないのが雇用回復力の鈍さだ。失業率が11.9%と、ネバダ州に次ぎ全米で2番目に高いカリ
フォルニア州。住宅バブル崩壊の傷が最も深く、住宅・建設業界はその後遺症に悩む。州政府の財政危機で公務員も大量にリストラされた。シリコンバレーをはじめ、最悪期は脱したとはいえ、労働市場の再生はまだ初期段階。金融危機では全米で880万人の雇用が失われたが、回復したのは180万人にとどまる。

個人消費に影落とすガソリン価格の高騰

一方、原油やガソリンをはじめとした商品価格の高騰が消費者心理に影を落とすと同時に、物価情勢の不透明感を強めている。

 

レギュラーガソリンの全米平均価格は1劈当たり約4ドルと、2009年初めから2倍以上に高騰。1以当たり86円程度で、日本(1リットル=約146円)に比べれば大幅に安いものの、米国の1人当たりガソリン消費量は日本の3倍強に及ぶ。1リットル=3ドルを超えると個人消費への打撃が大きいといわれ、実際08年の景気後退の一因となった。

 

消費関連企業の収益にも不安が生じている。衣料小売り大手・GAPは5月19日、製造コスト上昇を理由に今期の業績見通しを引き下げた。主原料の綿価格やアジアでの人件費の高騰が利益を圧迫しており、日本の大震災による売り上げ減少も追い打ちをかけている。同社は今後、製品の値上げを進める意向だ。

 

全米のインフレ率は4月の消費者物価総合指数で前年比3・2%と1月から倍増した。一方、FRBが重視する食料とエネルギーを除いたコア指数では3%増と依然低水準。とはいえ、4ヵ月連続上昇とジリ高歩調にあり、警戒を怠れない。

金融政策の正常化は数年かけ柔軟に遂行

4月末の米国連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見でバーナンキ議長は、今年1〜3月期の景気減速は悪天候など一時的要因が多い」とし、今後も穏やかな成長やFX(今年は実質3%強)が続くと展望。ただ雇用回復は「非常にスロー」で、「われわれは極めて深い穴から抜け出そうと苦心している」と語った。ガソリン高騰によるインフレ率上昇も「一時的」であり、しだいに通常レベルに落ち着くと発言。これらは、金融引き締めは時期尚早との考え方を示唆している。

 

焦点は、ポストQE2の進め方。5月18日に公表された4月末のFOMC議事録では、FRBが出口戦略の準備的検討を始めたことが明らかに。そこから示唆されるのは、FRBはQE2後も当面、買い取った住宅ローン担保証券(MBS)や国債の償還分を再投資することでバランスシートの規模を維持する。その後、金融政策の正常化開始を予告しなマ兄でMBS償還分から再投資政策を停止し、バランスシートの自然減を図る。それからFF金利の引き上げを開始。最後に資産売却によって本格的な資産圧縮を進めていく。

 

利上げを資産売却より先行させるのは、資産売却時に景気後退リスクが高まった場合、利下げで柔軟に対応できるため。資産売却のスピードについては、5年程度かけてFRBの資産を国債のみに戻す漸進方式への支持がFOMCの過半を占める。

 

そのため、出口戦略は長い時間をかけて、慎重かつ柔軟に遂行される可能性が大きい。市場では、再投資政策を停止するタイミングは今年秋から来年前半にかけて、利上げが来年央前後、資産売却の開始が13年以降との見方が多いようだ。

 

FRBの慎重な姿勢が示唆されたことで、為替や金利などの金融市場は比較的落ち着いた動きを続ける。来年央前後の米利上げ開始、日本据え置きを前提にすれば、来年にかけ日米の市場金利格差はしだいに広がり、ドル高円安が進むとの見方が多い。UBSのグローバルエコノミスト、ポールードノバン氏は、「FRBは来年初頭にも利上げを開始する。ドルは今年末には対円で85〜90円へ緩やかに上昇する」と読む。

 

一方、米国の超金融緩和状態が長期化すれば、マネーが米国からあふれ、一段のドル安や商品価格の高騰、新興国のインフレを進行させる懸念も強い。バーナンキ議長は4月末の記者会見で、「FRBの金融政策がドルの価値を下げ、米国人の生活水準を低下させているとの批判にどう答えるか」と問われ、「物価安定と雇用最大化を追求すれば、中期的にはドルの基盤は強化されるはず」と弁明したが、まだ成果は見えないのが現実だ。

 

ドル安の背景には双子の赤字拡大など金融政策以外の要因も多い。とはいえ、未曾有の量的緩和政策だけに、想定外の副作用を生むリスクは高い。その出口戦略にもかつてない不透明感が付きまとっている。

 

(引用:達人の勝てるFX比較ランド